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キジバト化したアオバトもいた 

私のアオバト仮説 その二

田端
2001.09.29
  • 前回の仮説は「熱帯のハト類のアオバトの仲間たちの中で、日本のアオバトだけが北限に生息域を広げた。それが海水吸飲行動と関連があるのではないか」というものだった。今回はアオバトキジバトの食性の違い、アオバトの近縁種ズアカアオバトの生態との関連でさらに謎に迫ってみよう。ご意見ご批判大歓迎!

  • アオバトは樹上採餌、キジバトは地上採餌が専門

     『大磯照ヶ崎海岸におけるアオバトの生態』の「ハト類の中のアオバト」という文章で浜口哲一さんが世界のハトたちをグループ分けしている。約300種いるハトたちは大きく4つの亞科に分類されるが、その大半は2つの亞科に入ってしまう。

 カワラバト亞科 約180種 カワラバトドバトはこの飼育種)、キジバトキンバトなど
 アオバト亞科  約120種 アオバトズアカアオバトヒメアオバトなど

 あと二つの亞科、カンムリバト亞科はニューギニアとその周辺に生息する3種、オオハシバト亞科はサモア諸島のオオハシバト1種だけだ。二つの主流グループの餌の採り方は大きく異なっている。 キジバトグループは主に地上で採餌する。 アオバトグループはもっぱら樹上採餌を行っている。

 藤巻裕蔵さんはアオバトキジバトの生息状況を北海道で調査され、生息環境の違いを定量的に明らかにされている。数量データはここでは省略するが、藤巻さんの要約するところでは「キジバトは森林から農耕地、住宅地まで広い範囲にわたって生息しており、生息数は森林より農耕地で多かった。アオバトは主に森林に生息しているが、全般にキジバトより少なく、農耕地では森林におけるよりさらに少なく、住宅地には生息していなかった。2種の分布を比べると、キジバトの方で生息環境の幅が広く、観察個体数も多かった」という。
 私には「農耕地ではキジバトは必ず観察されるのに、アオバトが観察されることはほとんどない」という記述個所が印象的だった。

  • 種子がその中に見つからなかった!キジバトの糞

     鳥類学者の上田恵介さんは鳥類に飲み込んでもらうことで“種子分散”をはかっている植物種を調べてみようと立教大学キャンパス内のキジバトの糞を拾い歩いた。ところがキジバトの糞には植物の種子が見つからなかった。みんな消化されていて影も形もなかったのだ。

    こまたんでもそんな人がいた! 斎藤常實アオバト探検隊長だ。

    炎暑の照ヶ崎海岸の岩場でアオバトの糞を拾い集め、未消化の種子からアオバトが食べている植物種を割り出して丹沢から照ヶ崎への飛来の物証をつかんだ。
     キジバトは糞の中に種子が残っていないのに、アオバトは残っている。ここが違う!

  • 穀物食のハト類は寒さと乾燥に強いヤツだ

     上田さんは地上で採餌する穀物食のハトたち・キジバトグループは、新生代(今から6500万年前のこと)後期に地球上に冷涼・乾燥的な環境が広がり、草原が出現するようになってきて、果実食の熱帯のハト類(アオバトグループのこと)から森を出て地上採餌に適応するキジバトグループが出現したという。
     こうした穀物食のキジバトグループは堅い食物を多く摂取する。砂嚢の強い破壊力で堅い種子まですりつぶして消化吸収してしまう能力を持ったハトたちだ。 キジバトグループは果実を丸飲みするが、果肉も種子も消化してしまう。種子を消化吸収できないアオバトは厳密に言うならば、果実食というよりも果肉食と呼んだ方が適切かもしれない。
     こうしてアオバトたちが飛び回ったあとにはお腹を通って発芽しやすくなったと思われる種子が広く散布されていることから、アオバトを“森を造るハト”と呼びたい。(このテーマは後述)

  • まるでキジバトみたいなズアカアオバト

     アオバトは樹上採餌、キジバトは地上採餌という傾向をおさえておいてズアカアオバトというハトのことを話そう。
     ズアカアオバトアオバトに最も近いが別の種のハトだ。 ズアカ(頭赤)といっても日本にいる亞種は頭は紅くないので、アオバトとよく似ている。形態的差異は図鑑を参照してほしい。 ここで取り上げたいのは行動の違いだ。  高野伸二(1981)によると、

      分布: 琉球、台湾、フィリピンに留鳥として分布。日本では屋久島以南で繁殖し留鳥。
     D. Gibbs, et al. 2001: のMAPをまた紹介しておく(*著作権未解決により略)。

  高野伸二(1981)の記述を続ける。
 よく茂った常緑広葉樹林に留鳥としてすむが、村落の農耕地付近にも出現し、枯れ枝や電線に止まっていることもよくある。樹上で木の実を食べるが、ときには地上で草の種子や農作物を食べる。繁殖についてはよく知られていない。……とある。

 最近の観察記録を読むと、人里でよく見られる鳥で、電線にずらりと並んで止まっていることもあり、生息地に行けば見られる点では、ドバトキジバトに次いで見やすいハトだろうとある。奄美大島でズアカアオバトの繁殖行動を追ってビデオまで録ってこまたんに送ってくださった阿部優子さんのレポートでは自宅の庭のオキナワキョウチクトウの樹に巣を作って繁殖しているとある。
 これはまるでキジバトではないか。
 ズアカアオバトでは海水を飲むという行動は報告されていない。 キジバト的採餌行動と関連があるかもしれない。 ズアカアオバトのウンコが見た〜い!

 アオバト的採餌=海水吸飲
 キジバト的採餌=海水吸飲せず

 という仮説を立てて 次回はさらにこの謎に迫りたい。 謎は新たな謎を呼ぶ。

参考文献

  1. 阿部優子  1993: ズアカアオバトの繁殖行動  チリモス 1993.8  奄美哺乳類研究会
  2. 五百沢日丸  1996: 日本のハト大集合  Birder 1996.9    文一総合出版
  3. 上田恵介 1994 : 「ハトってどんな鳥?」 野鳥1994.9     日本野鳥の会
  4. 高野伸二監修 1981: 『日本産鳥類図鑑』 東海大学出版会
  5. 藤巻裕蔵 1999 : 「北海道中部・南東部におけるキジバトとアオバトの生息状況」Strix Vol.17
  6. D. Gibbs, et al. 2001:
      "Pigeons and Doves -A Guide to the Pigeons and Doves of the World-"  Pica Press