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奄美からの便り 

私のアオバト仮説 その4

田端
2001.09.29

 奄美からうれしい便りが届いた。「私のアオバト仮説」その二 で「ズアカアオバトキジバト化していて、食性も地上採餌をかなり行い、種子までも砂嚢ですりつぶして消化してしまう。だから、アオバトと違ってミネラル摂取のために海水を吸飲する必要がない」とシロウトの仮説を展開したところ、奄美の阿部さんから丁寧なお手紙が届いた。
 とても楽しく、また科学者らしい冷静な分析がいっぱいの文なので、全文をご紹介することにした。
 ズアカアオバトの砂嚢はキジバトと同じように強靱なものと見てとれるという見解は貴重なものと受け止めている。
 地上採餌の行動がキジバトほど見られなくとも、糞の中に種子がほとんど見られず、種子成分を消化吸収していると証明されれば、仮説は一歩前進だ。
 来年の夏、不幸にして溺死したアオバトの死体があったら、クール宅急便で奄美に送り、アオバトの砂嚢を阿部さんにぜひ見ていただきたい。

奄美(2001.11.1)→大磯(11.4)速達郵便

 田端 裕 様


 お手紙&こまのとり新聞をお送り下さりありがとうございます。楽しく読ませていただきました。お返事が大変遅くなり申し訳ありません。
 以下 おたずねの件について項目ごとに書いていきたいと思います(答になっていないかもしれませんが……)。


ズアカアオバトの糞について〉

 現在、骨折して野生復帰困難になってしまったズアカアオバトを1羽飼育しています。その子のフンならいつでも手に入りますので、この飼育個体で実験してみることは可能です。 
 通常はバナナ、インコのエサ、麻の実をメインにあげています。いつでも手に入るということでこれらのものをあげているのですが、イチゴ、カキ、ナシ、スイカ(お店から購入)、パパイヤ、グアバ、スモモ、タンカン(奄美の地場産果実)、シマグワ、ヒカンザクラ、アマクサギ、ウラジロエノキ、リュウキュウバライチゴ(野山に自生する木の実、ヒカンザクラはもともとはもちこまれたもの)の実などは季節限定で時々あげています。

 印象としてはイチゴの類が大好物です。これらの食物は大方果肉を含む漿果で、この飼育個体に堅果を食べさせたことはありません(麻の実やインコのエサは堅果に入るのでしょうか)。又、人が食する果物は果肉の部分が多く、ズアカアオバトにあげる時は果肉だけを食べやすい一口サイズに切ってあげているので、フンに種子が混じることはありえません。自生種のアマクサギやクワ、ノイチゴなどをあげた時は実をまるごと飲みこみますが、フンに種子が出ているのを確認したことはありません(でも、きちんとフンを砕いてカクニンしたわけではないので断定はできません)。 ただ、ヒカンザクラの実(内地のヤマザクラやソメイヨシノの実とは少し異なり長目のハート形をして赤熟します.黒熟しません)は、種子がフンの中にそのまま出てくるように思います。

 この飼育個体では見たことありませんが、野生のズアカアオバトが実を食べていたヒカンザクラの木の下に種子がそのまま混じったフンが落ちているのを見たことはあります(誰がしたフンか落ちた瞬間を見たわけではないので断定はできませんが、ズアカアオバトの可能性大)。

 少し話はかわりますが、私は傷病鳥として持ち込まれ、死亡してしまった鳥を解剖しています。その中にはズアカアオバトも含まれ、これまでに十数羽のズアカアオバトを解剖する機会がありました。破損のヒドイものや、長く飼育された後死亡したものもあるので、そんなに例数はありませんが、筋胃に内容物が入っていたものもいました。そして、その中にはまるごと残っている場合の方が多かったです。それらの種子の同定はほとんどできていません。

 すりつぶされた形で入っていたのはいわゆるドングリの実でした。奄美の森はシイの木が多く、シイの実の豊作不作は多くの森の動物たちの台所事情に関わってくるようです。この他にアマミアラカシ、オキナワウラジロガシ(ドングリのサイズがBig!!)などがあります。ズアカアオバトも堅果類を食べているのです。果肉のないドングリを食べるのだから、消化吸収されなければ、ズアカアオバトにとっては食べる意味がありませんよね?ドングリにとっては、ズアカアオバトキジバト同様、種子分散に一役かってくれるありがたい動物ではないようです。

 一方、漿果類の種子がすりつぶされた証拠は、私の剖検結果からは今のところありません。ただ、フンに種子が出てきたかどうかではなく、筋胃に種子がまるまる残されていたかどうかの記録なので、その点はご留意ください。筋胃より下部の腸でまるごとの種子が化学的な作用でドロドロにされるということは考えにくいですが、死亡した時点で、たまたま種子がそのままの形で残っていただけ……、あと一日生きていたら種子は筋胃ですりつぶされていた可能性はなきにしもあらず……です。

 又、ズアカアオバトの筋胃は筋が発達した強靱なもので、肉眼的にはキジバトと同様のものでした。

キジバトズアカアオバト〉 

 奄美大島に留鳥として生息しているハト類はキジバトズアカアオバトカラスバトの3種です。アオバトは奄美では記録がないようです(奄美野鳥の会発行 図説 奄美の野鳥 より)。

 やはりキジバトが一ばんよく見かけます。ヒトが生活する場に一ばん進出しているのは奄美でも同じだと思います。次に見かけるのがズアカアオバトでしょう。

 奄美大島は山林の占める割合が多く、島の内陸は北部を除き、ほとんど森林で、集落は海沿いに点在しています。平野部が少ないのです。ですから、集落のすぐ後ろが山になっており、ヒトが生活する場と森の生き物たちのすみかとは隣接あるいは重複していると思います。島の内陸の深い森にすむズアカアオバトが里に下りてくることはないかもしれませんが、森の端の方をすみかとしているズアカアオバトは、ヒトの生活域にある木々の実や草の実なども利用しているのだと思います。我が家もそのような森と隣接した所にあります。

 我が家の庭に営巣したズアカにとっては、森の一部にすぎなかったのではないでしょうか。そのくらい、我が家はほとんど森に同化しています。森にのみこまれつつあるというか、竹やぶに進出されつつあるというか、手入れもあまりしないのでよけい……。

 ズアカアオバトだけ特別、我が家の庭でよく見れるというのでもないのです。ルリカケスアカヒゲオーストンオオアカゲラも飛んできます。ルリカケスアカヒゲは家に営巣したこともあります。家の中で“アカマタ”というグロテスクな赤と黒の縞模様のヘビとも共生してましたし(もちろん同意のもとではありませんが、むこうが勝手に住みついていた……)。

 ですから、我が家を人里に分類していいものかどうか、そのことからしてギモンです。我が家で営巣したズアカに「人家の庭になんか営巣して君たちまるでキジバトみたいだね」といっても、「なんでー?ここは森じゃない?」としゃべれたら反論されてしまいそうです。

 とはいうものの、我が家が人里か森かの議論はおいておくとして、ズアカアオバトは奄美大島ではわりと見やすい鳥です。

 集落の道沿いに植えられたヒカンザクラの実や耕作地の周囲に生えるオオアブラカヤという大型草本の実のなる時期などは、複数のズアカが電線に止まって実を食べに時々下りていくのを見かけますし、学校の校庭や街路樹として植えられたアカギの実を食べにくることもあるようです。しかし、見通しのいい、開けた耕作地で、エサを探しながら地上をトコトコ歩くといったキジバトのような採食行動は私は見かけたことはありません。

 北海道の環境と奄美大島の環境は全く違うわけで、農耕地などの人の生活域でもよく見られるズアカアオバトアオバトより生息環境が広くキジバト化しているとは、いちがいにはいえないのではないでしょうか。


〈我が家のズアカアオバト

 我が家ではズアカアオバトは残念ながらもう営巣していないようです。
 かれこれ5年くらい経つでしょうか。でも時々すぐ近くで声がして、探すと青い葉にまぎれてなにげにすぐ近くに止まっていることはあります。

 以前、ズアカが営巣した玄関前のミカンの木はいつのまにか枯れ、今年の台風で折れてしまいました。でも、ビデオでの観察を続けていた営巣木のオキナワキョウチクトウは毎年夏に白い花を咲かせてくれます。

〈その他〉
●奄美の野鳥に詳しい方を紹介します。 
 奄美野鳥の会 tel宦@0997(55)1157
        ホームページ http://www.synapse.ne.jp/~lidthi/
 常田(つねた)守 奄美では知る人ぞ知るナチュラリスト.本職は歯科技工士.最近写真集を出版した.『奄美大島』文一総合出版 ¥2600
 島の自然に精通し、正しい認識をもった方だと思います。おススメの一冊なので、よろしければ読んで(見て)みてください。ズアカも少しのっています。
 今日、田端さんからお手紙を頂き、あれこれズアカアオバトについて考える時間をもてたこと、とても感謝しています。最近ズアカだけでなく、興味があったはずのシマの野生生物のことから遠ざかっていたかんじだったのです……。自分なりにあーだこーだと考えているうちに、やっぱりズアカおもしろいよなーという気持が再燃してきました。
 こちらで何かできること等ありましたら、またご連絡ください。
                       それではまた。


                          2001.11.1 
                                阿部優子