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アオバトとブナ林

私のアオバト仮説 その8

田端
2002.07.02

 ブナの芽吹きが始まった丹沢で夢のように美しい光景を見た。ブナの新芽を食べたり、休んだりしているアオバトの群に見とれてしまったのだ。
 アオバトとブナ林の関係が気になってきた。

照葉樹林とブナ林

 アオバトの全国分布を文献を集めて調査している内に、二つの広葉樹林にこのハトたちがかかわりが深いことがわかってきた。

 二つの広葉樹林とは、照葉樹林とブナ林である。

 北半球で裸子植物に次いで広大な面積を占めているのは温帯ではブナ林、暖帯ではシイ、カシなどの照葉樹林が多い。

 照葉樹林は常緑樹林、ブナ林は落葉樹林である。

 江口和洋さんは「餌がいつも豊かな照葉樹林と季節の変動の大きなブナ林。二つの広葉樹林は、動物との関係も異なる」という文章の中で、季節変動の有無が二つの樹林帯のなかでの動物と植物の関係に異なったドラマを展開させることを簡潔に述べている。

 中村一恵さんは熱帯の森林に生息している鳥のグループに属するミゾゴイアオバトカラスバトアオゲラヤイロチョウヒヨドリサンコウチョウメジロなどは、日本では熱帯林に似た照葉樹林に好んですみついていることを指摘している。

 しかし、アオバトアオゲラも)たちはブナ林にも進出し北へとさらに分布を拡げた……と中村さんはも述べている。

 南日本の常緑の照葉樹林の林下でドングリを地上採餌していると思われるアオバトたちは、北限の地へとチャレンジした場合、ブナ林ではなにを食べているのだろうか?

 平均的にはブナは5月に開花し、10月から11月に結実する。

 ブナ林にアオバトが生息している時期はほとんど夏季に限られるようであり、ブナの新芽を食べるのは目撃したが、落下した堅果を採食する可能性は乏しいようだ。

 クナシリ島にまで北上したアオバトの食性についてN. A. ネチャエフ は「果実を食べるハトが国後島に生息するのは、エゾヤマザクラの実があることと密接な関係がある」と語っている。

 明るい林内に生育する植物の液果を主に食べているのではないかと思われるが、丹沢では、堂平のササ類は消失しているようで、低木類が繁茂しているようすも見られず、心配である。

 今回私たちは4月中旬から6月にかけて丹沢の堂平でアオバトの繁殖調査を予定しているが、果たして、ブナとアオバトの関係が見えてくるのだろうか?

表1照葉樹とブナ林の植生・鳥

生物
照葉樹林
ブナ林
高木層
シイ、カシ【堅果
ブナ【堅果
低木
アオキ、ヒサカキ【液
高木層、低木層、蔓植物など多層、多彩
蔓植物
【液果
植物
植生は発達せず、キノコ類の他、土壌生物が豊富
ササ類 カタクリなど“春植物

渡り鳥

優占度

9%程度
夏鳥  24% 冬鳥 18% 
鳥 類
ヤマガラ、ヒヨドリ、メジロシ ジュウカラ、アオゲラ、ミゾゴイ、サンコウチョウ
ヒガラ、コガラ、シジュウカラ、ウグイス、ゴジュウカラ、コマドリ、ミソサザイ、マミジロ、コルリ
アオバト
哺乳類 、昆虫類 など他の生物

表2 日本各地のアオバト情報

日本野鳥の会編『日本の探鳥地777』や各地の支部が編纂した各県の鳥類図鑑等や各支部報などの情報を参考にした(26 Apr 2002)
  観 察 地 環 境 季 節 生 息 状 況
北海道 稚内市、江別市野幌森林公園、大沼公園、函館山、鳥崎渓谷で記録      
富良野東大演習林 針広混交自然林 初夏 葉隠れに鳴く
屈斜路湖 地熱のためか温帯植物が 7月 林道沿いで
糠平 広葉から針葉への移行帯 初夏 記録
北大苫小牧演習林 針広混交林 5〜7月 記録
恵庭公園 広葉樹林 5中〜6下 よく鳴く
西岡水源地 広葉樹林 5上〜7上 林の奧から声が
室蘭・崎守海岸   8〜9月 海水吸飲をハヤブサが狙う
長橋苗圃 自然林 多く観察される
張碓海岸 海岸 7月初〜10月初 最大200羽はいるだろう.盛夏は海水浴客で磯には降りられない
塩水吸飲: 紋別市(コムケ湖・興部町沙留富丘)、稚内市浜勇知、茅部郡森町、上磯町茂辺地      
青森 早瀬野ダム、久吉ダム、増泊林道、青秋林道、むつ湾などで記録      
十二湖 原生林 5上〜7下 鳴く
宇曾利山湖 ブナ、ヒバ原生林 生息
塩水吸飲: 西津軽郡鰺ヶ沢町奧赤石林道、深浦町北金ヶ沢      
岩手 新山高原、小岩井、盛岡市(浅岸、松園、繋、箱ヶ森)、宮古市重茂半島      
岩手山・馬返 広葉樹林ブナ林 5中〜6下 鳴く
塩水吸飲: 岩手郡雫石町国見温泉      
宮城 観察機会は多くない.栗駒山など奥羽山脈に.蒲生海岸(91.9.4)など海岸部の事例も      
秋田 鹿角市(十和田湖)で記録.  塩水吸飲は南秋田郡天王町で渡り時に記録あり      
山形 高舘山・城山 ブナ純林と落葉自然林   珍鳥記録
羽黒山 ブナ林 5下〜7中
月山四合目ブナ林、飛島で記録あり      
福島 甲子高原 ブナ林   運がよければ声や姿も
秋元湖、檜原湖、小野川湖、田島町山寺で記録あり      
茨城 伊師浜海岸 ウミウの来る海岸 6月 マツに止まることを見ることも
栃木 夏鳥.少ない.主に低山帯の広葉樹林に.繁殖は未確認.      
群馬 碓氷郡霧積周辺.甘樂郡から多野郡にかけての低山帯森林に繁殖.少ない.8〜10月鉱泉や工場排水を吸飲      
埼玉 三峰・雲取 三峰公園 4下〜7上 モミの梢で鳴く
千葉 記録未確認      
東京 三頭山 山の西・山梨側 20、30羽の群を見ることは稀でない
神奈川 大山 蓑毛からヤビツ峠 囀り
真鶴半島 クスノキ、スダジイ、クロマツ 初夏 鳴き声
新潟 夏鳥として4月下旬に山林に渡来.少ない.11月頃に渡去.渡り時には平地にも.佐渡で記録      
富山 朝日町城山(しろやま) スダジイ、アカガシ、タブの暖帯樹林.海に突出する樹叢   多い
石川 兼六園、気多大社、白峰村、舳倉島、西金沢で記録あり      
医王山 自然林 4〜5月 観察される
塩水吸飲: 金沢市普正寺町健民海浜公園の記録あり      
福井 岐阜との県境 クリ、ミズナラ、コナラなど広葉樹林 繁殖
鯖江市西山公園で記録あり      
山梨 高地や北部地方では広葉樹林で夏鳥として繁殖.冬は身延など峡南地方で過ごす      
長野 北佐久郡(軽井沢野鳥の森・望月高原)、佐久市(内山、志賀)、諏訪郡(入笠山、原村)、岡谷市(塩嶺、西山)      
城山国有林 針広混交自然林 4下〜7上 鳴き声
塩水吸飲: 上水内郡戸隠村戸隠森林植物園      
岐阜 ほぼ毎年観察される.初春岐阜公園で地上でドングリの実を食べる.      
静岡 寸又峡、日本平、天城山、竜頭山、香貫山、静岡市(沓谷谷津山、東麻桟遊水池、安倍川上流、長沼護国神社)、富士宮市井之頭、根原、宮町.浜松市(泉町公園、中野町)、引佐郡細江町、磐田郡(天竜スーパー林道、川根町蕎麦粒山)、藤枝市市之瀬      
       
御殿場・腰切塚遊歩道 ブナ、カエデなど 5中〜7上 声が聞かれる
朝霧高原 フジザクラ 5上〜7上 見ることもある
愛鷹山・水神社   春から夏 見られる
塩水吸飲例: 由比町(8〜10月)、浜名湖(初秋)、清水市(5〜11月)、大谷川河口      
愛知 東山植物園 コナラ、カラマツ、ツバキ 会うこともある
名古屋市(八事興正寺、鶴舞公園、上野天満宮、勅使ヶ池)、一宮市で記録あり      
三重 赤目四十八滝 明るい暖帯林 観察される
県民の森(草里野)   秋冬 観察される
滋賀 記録未確認      
京都 貴船神社 森林の中の渓谷 初夏 観察される
大阪 箕面 シイ、カシ天然林 11上〜7上 アカマツ林によく止まる
金剛山 ブナ自然林 5中 声が聞かれる
兵庫 六甲布引 アラカシ、ツバキ照葉樹林 観察される
書写山(姫路) アラカシ、シイ、ヒノキ混交林 観察される
坂の谷 県に残された最後ののブナ原生林 観察される
奈良   山地帯の森林   生息
和歌山 和歌山市、那智勝浦町、古座川町、太地町、日高郡、海南市、海草郡、伊都郡、有田郡、田辺市、西牟婁郡      
塩水吸飲: 繁殖期以外(除く冬季)に日高郡美浜町元の脇、田辺市天神崎      
鳥取 三徳山(三朝温泉) ブナ大木 4下〜7上 声を聞くこと多い
島根 三瓶山 ブナ林 4下〜7上 時折声を聞く
塩水吸飲: 松江市殿町松江城内、八束郡玉湯町宍道湖      
岡山 県立森林公園 ブナ、ミズナラ原生林 春から夏 鳥取県境まで登れば姿を見せる
蒜山(ひるぜん)   初夏 声と姿を楽しむ
毛無山(けなしがせん) ブナ原生林 観察できる
広島 県民の森(広島) ブナ原生林 4下〜7上 声がよく聞こえる
刈尾山 西中国山地最大ブナ林 5月 声だけは聞かれる
三段峡   5,6月 観察される
山口 森林性冬鳥.少ない.市街地にも現れ、特にカシ林を好む.夏季は玖珂郡や佐波郡の奥地に局地的に生息例が.      
徳島 阿南市、上那賀町、相生町、木頭村、徳島市牟岐町、土成町、山城町、木沢村、阿波町など      
眉山 シイ、ホルトノキ、ヤマザクラ、コナラ、ムクノキなど 観察される
高越(こうえつ)山 ブナ自然林 留鳥 記録
香川 丸亀市、琴南町、高松市立林公園      
大川山(だいせんやま) 自然林が少し残る 川沿いに観察される
余木崎 海岸 夏から秋 多いときは100羽を超える群が海水吸飲に
愛媛 高縄山   春から夏 鳴き声を聞く
高知 篠山(ささやま)   春から夏 見られる
福岡 北九州市、遠賀郡、田川郡、福岡市など県下で記録あり      
英彦山(ひこさん) ブナ林 5下〜7上 声が聞こえる
塩水吸飲: 豊前郡松江漁港      
佐賀 記録未確認      
長崎 11,12,1,2,3,4,5,6月に記録あり      
熊本 菊池渓谷     営巣記録あり(大田真也氏)
内大臣   初夏 観察される
市房山 自然林 初夏 観察される
大分 中津市、宇佐市、豊後高田市、西国東郡などで記録あり      
祖母山 針広混交自然林 4下〜7上 鳴き声
丸尾山公園 森林公園 留鳥 ほぼ一年中姿が見られる
宮崎 行縢山(むかばきやま) カシ、シイ、タブ中心 一年中 留鳥のアオバトの姿も
霧島山系 カシ、タブなど常緑広葉樹 初夏 薄暗い森の中、声が
宮崎神宮 シイ、カシ、ケヤキ、スギの森 観察される
鹿児島 県内各地の林地で観察される      
慈眼寺公園 針広混交自然林 11上〜3下 翼を休めている姿が
沖縄 近縁種のズアカアオバトは生息しているが、アオバトの記録はない      

 

高麗の鳥:2002年5月(第237号)

参考文献

  1. 中村一恵 1980: 「神奈川の鳥類相」・日本野鳥の会神奈川支部編 神奈川の野鳥 有隣堂
  2. 江口和洋 1993: 「餌がいつも豊かな照葉樹林と季節の変動の大きなブナ林。二つの広葉樹林は、動物との関係も異なる。」 動物たちの地球 111 朝日新聞社
  3. こまたん 1992: 大磯照ヶ崎海岸におけるアオバの生態 日本野鳥の会神奈川支部
  4. 極東鳥類研究会 1991: N. A. Nechaev 「国後島南千島)の鳥類の生活における木本類の種子と果実の意義」  極東の鳥類6 千島特集