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ナトリウムを摂取するハトたち

私のアオバト仮説 その16

田端
2003.01.13

今回はNaを摂取するハトたちを、海辺にこだわらず取りあげて、アオバトのNa摂取行動の謎を解明するための新しい切り口としたい。

大磯照ヶ崎海岸におけるアオバトの生態』のなかの一文「ハト類の中のアオバト」で浜口さんはこう書いている。

“このように植物食に専門化しているために、ハト類には塩分(ミネラル)の補給の必要が生まれている。 モリバトアカハシバトシロボウシバトキンバトキアシアオバトなどで家畜用に用意した塩をついばむのや、塩分を含む土を食べるのが記録されており(D.Gardner 1991)、飼い鳩を飼育するときには塩土が必要とされている。 しかし、日本のアオバトのように海水を飲む習性は、広く知られているものではないようであり、1991年に出版された「Life of Pigeon」(D.Gardner 1991)にもそのことはまったくふれられていない。” 

 前回の仮説“その十五”にも書いたが、私は“海水を飲む習性”にあまりにもとらわれすぎていて、浜口さんの文が提起している“Naを摂取する”というレベルで考察していなかった。

“Naを摂取する”ハトたちはアオバト以外にもいる。摂取する場所として、海岸は例外的なのかもしれない。”

 そのように発想を転換すれば、アオバトオビオバトや、モリバトアカハシバトシロボウシバトキンバトキアシアオバトなどのハトたちを大きくとらえることで見えてくるものがある。キジバトドバトにも海水吸飲の観察例はないわけではない。
 

 カラスバトについては、渡久地豊・金城道男・市田豊子(1996)に海水を飲む行動が報告されている。その論文では“S.Cramp(1985)にヒメモリバトモリバトが汽水や海水を吸飲する行動が報告されている”ことも紹介されている。いろいろな文献を調べて、こうしたハトたちのプロフィルをざっと概観しておこう。

 カワラバト属では…

 ヒメモリバト Columba oenas Stock Dove

  欧州でよく見られるハト。イギリス及び欧州西部、北はフィンランド・スカンジナビア南部から、南はポルトガル、アフリカ北西部、中東、ロシア南部に分布。林縁や開けた森などのほか、耕地や市街地の公園などにも生息。地上採餌。草の実や穀物などのほかカタツムリなども食べる。時には汽水や海水を飲み、小石や小砂をよく食べる。S.Cramp(1985)
 Stock Doveの名は、雑木の切り株から群生する枝の中に営巣することからという。

 モリバト Columba Palumbus Wood Pigeon

  欧州でよく見られるハト。欧州・アフリカ北部、イラン、インド北部にかけて分布 北大西洋諸島のマデイラ、アゾレス、ロシア西部にも。名前の“森”だけでなく、開けた場所や市街地などに数多く生息。ほとんど地上採餌。本来の繁殖期は夏で、主に食べる雑草の種子が実る8月にヒナを育てることが多いが、公園などでは一年中繁殖している。早朝に道路や舗装道路から小石、小砂を食べ、時には汽水や海水を飲む。S.Cramp(1985)

 カラスバト Columba janthina Black Wood Pigeon

 日本では伊豆七島・沖縄諸島・奄美大島・硫黄島などに分布。韓国西南部沿岸の島ではまれな留鳥。中国の山東半島の島、台湾などではまれな夏鳥。よく繁った常緑広葉樹林に生息。ツバキなどの木の実や花芽を食べる。樹上よりも地上に落ちた木の実を多く採餌。
  渡久地豊・金城道男・市田豊子(1996)によると、沖縄の名護市のやんばる地区の沿岸の常緑広葉樹林に夏期集団ねぐらがあり、そこから海岸近くの樹木に移動した後、干潟や岩礁に降りて海水を飲んだり、小石や長径5mm前後の二枚貝を摂食していたという。
 この塩類摂取行動は6〜7月の早朝に見られ、最大は7月14日の200羽〜300羽。ツミに襲われた例もあり、体色に似た暗黒色の岩盤で日が射さない早朝に採食するのは隠蔽効果もあるかもしれないという。
 渡久地豊らの塩類摂取の原因についての仮説は、@果実食のカラスバトが、この時期に摂食している果実や種子や葉(※)などからだけでは、必要な塩分やミネラルが摂取できない、Aヒナへピジョンミルクを与える際に、親が普段食べている果実や種子の塩分ではまかないきれない…などが考えられるとしている。
 ※ガジュマル、ホソバムクイヌビワ、オオバギ、センダン、フカノキ、クワノハエノキ、ウラ

ジロエノキなどの実、シマタゴ、ショウロウクサギ、トキワギョリョウなどの葉

 シロボウシバト Columba leucocephala White-crowned Pigeon
 

 北アメリカ(フロリダ南部)カリブ海の島国(キューバ、バハマ、ジャマイカなど)、中米のベリーズ、パナマに分布。警戒心の強いハトだが、繁殖営巣地から果実がなっている樹林やブッシュに毎日通う。
 

オビオバト Columba fasciata Band-tailed Pigeon

  北アメリカ西部から中央アメリカ・南アメリカ北西部に分布。山の斜面や灌木林・森などに生息。数羽の群れで行動するが、渡りの時期には大群をつくることもある。最近の研究(Oregon州立大野生生物生態学者、Robert Jarvis氏による )で、Na不足による繁殖期の栄養バランスを補うために、家畜用の塩補給所で塩をついばんだり、湾岸沿いや河口域で塩水を飲み、Naを補給していると考えられている。

 アカハシバト Columba flavirostris Red-billed Pigeon

北アメリカ(テキサス)、メキシコ、コスタリカなどに分布。森から開けた場所まで多様な環境に適応している。小群で行動するが、時には大群で果実やドングリなどを採食する。地上で発芽したばかりの穀類やトウモロコシを採餌して、農家にとって害鳥になる場合もある。

 キンバト属では…

 キンバト Chalcophaps indica Emerald Dove

西はインド・スリランカから、東はスラウェシ島・マルク諸島、南はオーストラリア北東部に分布。日本では沖縄南部に分布。常緑広葉樹林に生息。

 アオバト属では…

 キアシアオバト Treron phoenicoptera
             Yellow-legged Green Pigeon
 

 インド・スリランカ、東南アジア(除く南部)に分布。樹上採餌専門の果実食。M. Woodcock (1980)
 生息域もいろいろ、属も一つではないこれらのハトたちのNaを摂取する時季とその時季の食性などの記録をできるだけさがして収集蓄積していけば、アオバトの海水吸飲の謎を解くカギがそこに見つかるかもしれない。

参考文献

  1. こまたん 1992: 『大磯照ヶ崎海岸におけるアオ バトの生態』日本野鳥の会神奈川支部

  2. D.Gardner 1991: 『Life of Pigeon』 Cornell University Press

  3. 渡久地豊・金城道男・市田豊子 1996: カラスバトColumba janthinaの塩類摂取行動.『STRIX Vol.14』日本野鳥の会  

  4. S.Cramp(ed)1985: 『Handbook of the Birds of Europe the Middle  East and North Africa Vol.「』  Oxford University Press 

  5. M. Woodcock 1980: 『Collins Handguide to the BIRDS of the Indian Sub-Continent』 Collins

  6. D.F.Miklos 1977: 『The Audubon Society Feild Guide to North American Birds Western Region 』 Alfred A.Knopf, Inc
    D. Gibbs, et al. 2001: "Pigeons and Doves -A Guide to the Pigeons and Doves of the World-"  Pica Press

  7. 吉井正 監修 1988 : 『コンサイス鳥名事典』 三省堂

  8. John Mackinnon・Karen Phillipps・何芬奇 
            2000:『中国鳥類野外小冊』 湖南教育出版社

  9. Woo-Shin Lee, Tae-Hoe Koo,Jin-Young Park 2000: 『A FIELD GUIDE TO THE BIRDS OF KOREA』      LG Evergreen Foundation