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新たな謎への挑戦

仮説が新しい仮説を生む(下)

私のアオバト仮説 その19

田端
2003.03.30

かつて日本列島にアオバトが多数生息していたこと、山鳩色という色名の存在から歴史的にも時代をさかのぼっての存在証明ができたことなど、過去への調査はいちおう足がかりが出来た。

“なぜ海水を飲むのか”という謎は、“なぜナトリウムを摂取するのか”という問いかけに変えて追求するのが、よさそうだ。未解明の仮説や、新たに出てきた仮説もあげておこう。

【】内は『高麗の鳥』に掲載されたときの仮説番号

砂嚢は自在に使われている!

【その二、その四、その十三】

果実(果肉)食・樹上採餌 → 穀物食・地上採餌

アオバト ズアカアオバト キジバト

上の図式を単純に当てはめ、ズアカアオバトを中間的位置にあるとした仮説はまだまだ生煮えだった。ズアカアオバトの砂嚢がキジバト同様堅固であるので、種子を粉砕して消化してしまうが、アオバトは違う…と考えたのだが、奄美の阿部優子さんが送って下さったアオバトの解剖所見によると、アオバトの砂嚢もズアカアオバ同様強固なようである。

名古屋のアオバトでもドングリは磨り潰されていたし、漿果を食べるときと、穀果を食べるときとで、砂嚢の使い方を変えたり、粉砕用の砂や小石を呑み込んだりして対応しているのかもしれない。

上田・野間(1999)にこんな記述があった。キジバトや、同じキジバト属のシラコバトベニバトなどは果実食ではなく穀物食で、マメ科などの堅い種子をすりつぶす砂嚢を持ち、普通の種子なら簡単に消化してしまう。 カラスバトはそれよりさらに大型で、シイやタブノキの照葉樹林にすんで、ドングリ等の大型の種子を主食にしているハトである。砂嚢が強くなるにつれ、より堅い種子も消化できるようになる。

カラスバトを保護飼育した岩崎由美氏によると、ツバキの実でさえ簡単に消化し、砂嚢で種子を砕くガリガリという音が、かなり離れていても聞こえるそうである(すごいなあ、聞いてみたい)カラスバトの小笠原産亜種のアカガシラカラスバトは地上に落ちたシマホルトノキの大きな堅い種子を好んで食べる(高野肇氏私信)。これらのハト類は、植物にとっては種子の捕食者として働く(種子散布者ではなくて…田端注)可能性が高い。

しかし、カラスバトがねぐらにした木の下には、カラスバトの糞に混じって、たくさんのタブノキなどの種子が健全な姿で落ちていることがある。カラスバトはドングリのように外側も堅い実を採食した場合は実を砕き、柔らかい液果を扱うときは周りの果肉だけを消化して種子を壊さないのではないかと、わたしたちは考えている。

ヒゲガラという小鳥は昆虫を食べる頃は砂を捨て、砂嚢を縮小するということを以前書いた。アオバトも基本的には頑丈な砂嚢をガリガリと使ったり、ソフトにギュッと絞ったり、臨機応変に使いこなしているのではないか。ほんとうに生き物は不思議だ。文献をいろいろ調べてみると、

  • “Fruit Dove(ヒメアオバト属など)は種子は未消化で排出、Green Pigeon(アオバト属)は消化器官が種子食ハトタイプで固い種子を粉砕消化が可能”、
  • “果実食のハトは大きな胃を持つが、アオバト属だけは例外で種子食と同様な狭い胃で、中に小石を含んでいる”

……といった記述があった。胃の比較もしてみなければならない。

種子散布者? 種子捕食者?

解剖の勉強も必要だが、アオバトが種子散布に果たしている役割についても、広い視野での検討が必要だ。アオバトズアカアオバトはいわゆる“棲み分け”を地域的に行っているようだが、ヒヨドリツグミなどの鳥たちとの競合はどうなっているのだろうか?、

さらに、カケスアオバトの関係もおもしろうそうだ。川内博さんがこんなことを書いている。

カケスはカシやナラのドングリが大好きなため、カケスの生息地とドングリのなる樹木の分布は一致していて、互いに共生していることが調べられています。その関係は地球規模で、ユーラシア大陸から北アフリカまで広く続いています。

カケスはかつては東京23区の緑地にも飛来していましたが、1970年代半ばごろからほとんど姿を見せなくなりました。ドングリはたくさん実っているのになぜかと疑問に思っていましたが、市街地の緑が彼らの好む「雑木林」ではなく、「森」になったためと思われます。薪や炭を生産するための雑木林は、いつも人が手入れをして明るい林だったのが、放置され木が生長して薄暗い森になったとき、彼らが棲める場所ではなくなったようです。

主食さえあれば野鳥たちは生活できるというわけではないのです。”

食事場所の条件がカケスよりアオバトの方に適するように変化してきたのかな。こういった視点も落とせない。

Naを摂取する”ハトたちはアオバト以外にもいる 【その十五】【その十六】

高波が打ち寄せる危険な大磯照ヶ崎海岸に、命を賭けて群れで海水吸飲に飛来するアオバトの行動は、“なぜそうしてまで海水を飲むのか”という疑問を投げかけてきた。

しかし、ナトリウムを摂る必然性から考えれば、海以外でNaをとる方が主流、海岸は少数派と考えた方が説明が付くようだ。 程度の差こそあれ、ナトリウムを摂るハトたちのリストを作って、共通項をさぐる試みもすべきだろう。

表19.1 ナトリウムを摂るハトたち

カワラバト

ドバト

Columba libia var.domestica
Domestic Pigeon

カワラバト

Columba libia)が家禽化したものが野生化した

ヒメモリバト

Columba oenas
Stock Dove

モリバト

Columba Palumbus
Wood Pigeon

カラスバト

Columba janthina
Black Wood Pigeon

シロボウシバト

Columba leucocephala
White-crowned Pigeon

オビオバト

Columba fasciata
Band-tailed Pigeon

アカハシバト

Columba flavirostris
Red-billed Pigeon

キジバト

キジバト

Streptopelia orientalis
Eastern Turtle Dove

キンバト

キンバト

Chalcophaps indica
Emerald Dove

アオバト

キアシアオバト

Treron phoenicoptera
Yellow-legged Green Pigeon

アオバト

Treron sieboldii
Japanese Green Pigeon

生息域もいろいろ、属も一つではないこれらのハトたちのNaを摂取する時季とその時季の食性などの記録をできるだけさがして収集蓄積していけば、アオバトの海水吸飲の謎を解くカギがそこに見つかるかもしれない。Na摂取ハトのなかのアオバトという考え方に立とう。

 

Naをなぜ摂取するのか 【その三】【その十四】

 海水と温泉の成分はよく似ている。アオバトが欲しいのは海水中のNaか? それともミネラルか? という仮説を立てたが、Naに絞って考えた方がよいようだ。オビオバトNa−Kバランスを保つためにミネラルサイト(海岸もある)でNaを摂取する…というJarvisさんの仮説が検証されている。

照ヶ崎での幼鳥・若鳥の観察記録がまとまってくると、ナトリウム摂取の必要性と、アオバトの生活史のなかの時期との関連の解明にも光が当てられてくるだろう。

ピジョンミルク生成とNaの関係、関連ホルモン・プロラクチンとは 【その十】

 ピジョンミルクの成分をさらに深く調べる必要がある。Naを多く含んでいる…と文献にあるが、そのデータが見たい。また、この文献のピジョンとは「なにバト?」なのか。ミルク生成と海水吸飲との関係はあるのか?ミルク生成に関与するホルモン・プロラクチンと、Na摂取の関係がわかってくれば、謎解きは一歩前進するのか?未解明の分野がまだ多い難問だ。

参考文献

  1. 上田恵介・野間直彦 1999: 林の中の“草の実”を運ぶもの.上田恵介編著『種子散布』助けあいの進化論<1>【鳥が運ぶ種子】

  2. A.F.Skutch 1991: 『Life of Pigeon』 Cornell University Press

  3. 川内博 2003: 鳥 ウォークウォッチング 毎日新聞2003.2.27夕刊

  4. D. Gibbs, et al. 2001: "Pigeons and Doves -A Guide to the Pigeons and Doves of the World-" Pica Press