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ドングリとアオバト(2)

私のアオバト仮説 その21

田端
2003.09

 

 アオバトが食べているドングリの種類が知りたくなってきた。それが限定されていることがはっきりすれば、その樹種の分布から、アオバトの冬の行動圏がわかるかもしれないと思ったからだ。

クヌギのドングリはノドを通らないのでは

 まず、アオバトの喉を通ることができるドングリと、太すぎて喉を通らないドングリがあるのではないかと仮説を立ててみた。

 外側が柔らかく、押しつぶして無理して呑み込めそうな漿果と異なり、ドングリ類は外側が堅いので、ドングリの直径の大きさが意味を持つのではないかと考えたのだ。アオバトの喉って、どのくらい拡がるのだろうかと悩んでいたら、実にタイムリーな情報を手に入れることができた。

 

 「ドキドキ自然史ウオッチング」で見せるようにきれいどころをと思って、アオバトのを剥きました。で、大発見。

 そのうの中からドングリが1つ出てきました。

 試してみると、アオバトが口を目一杯あけてようやく飲み込めるような大物です。こんな大きなのを食べるのも感心しましたが、ドングリを食べること自体も驚きです。

 ドングリを消化できるなら、液果の種子も消化するだろうし、種子散布なんかしないんじゃないかな〜。

 2003年1月12日  (大阪市立自然史博物館)

 『近畿地区 鳥類レッドデータブック』の著者でもある和田岳さんのホームページ「鳥小屋」を覗いていたら、こんな記事があったのだ。さっそくメールを出して尋ねてみた。

【Q このドングリとは何でしょうか? アラカシ?、もしかしてクヌギ? 興味津々です。】

すぐに和田さんから返事が来た。

…………………………………………………………
田端裕さま
 和田@大阪市立自然史博物館です。
 後から植物担当学芸員に見せたらアラカシと言われました。
 本当に呑み込めるのか、ドングリを出し入れしてみたところ、呑み込めるギリギリのサイズでした。
 クヌギを呑み込むのは不可能だと思います。
 参考になれば幸いです。
    和田 岳 (Takeshi WADA)
…………………………………………………………

 やったー!

 この個体は、2002年12月3日に大阪市立自然史博物館(大阪市東住吉区長居公園)のガラスに衝突して死んだ個体で、キジバトはよく衝突するが、アオバトは初めてということだった。

 “アラカシがぎりぎり”ということなので、さっそくドングリ類の大きさをリストアップしてみた。(単位はcm)。数値は北村・村田(1979)によったが、無いものについては、伊藤・北川(2001)の実物写真から田端が推計した値を斜体数字で示した。

常緑樹

直径

長さ

ウバメガシ(コナラ属)

1.2

1.8

アラカシ(コナラ属)

1.5

2

シラカシ(コナラ属)

1.2

1.51.8

イチイガシ(コナラ属)

11.3

2

ウラジロガシ(コナラ属)

1.2

1.7

ツクバネガシ(コナラ属)

1.21.5

2

アカガシ(コナラ属)

1.11.3

12

オキナワウラジロガシ(コナラ属)

22.7

2.7

スダジイ(シイ属)

0.9

1.51.8

ツブラジイ(シイ属)

0.81

1.5

オキナワジイ(シイ属)

−−−

−−−

マテバシイ(マテバシイ属)

1.5

22.5

シリブカガシ(マテバシイ属)

1.6

2

 

落葉樹

直径

長さ

ブナ(ブナ属)

0.9

1.5

イヌブナ(ブナ属)

0.5

11.2

クヌギ(コナラ属)

22.3

22.5

アベマキ(コナラ属)

1.8

1.8

カシワ(コナラ属)

1.5

1.52

ミズナラ(コナラ属)

1.21.5

23

ナラガシワ(コナラ属)

1.4

2

コナラ(コナラ属)

0.81.2

1.62.2

 

 ここで対象とするのは直径の方の数値だ。長さが大きくとも縦にくわえて喉を通過させればよいからだ。 オキナワウラジロガシ、シリブカガシ、クヌギ、アベマキは無理ということになる。

 樋口さんの本(1978)におもしろい図表があった。体の大きさと食べる木の実の直径の大きさとの関係が出ていた。

体重( 49g〜163g)→ 実の直径(7mm)

体重(123g〜414g)→ 実の直径(20mm)

体重(245g〜802g)→ 実の直径(30mm)

体重(592g〜802g)→ 実の直径(40mm)

 

とう関係がニューギニアの低地降雨林に棲む果実食のハトたちの間に成り立っているというのだ。アオバトの体重217〜300gがちょうどこの法則に当てはまるような感じだ

落葉樹のドングリをアオバトは食べているか?

 アオバトがドングリを食べているという記録はいまのところ11月から翌年の3,4月の間に集中していて、ドングリ食の時期は非繁殖期と推定される。

 ドングリが秋になって殻斗(カクト=ドングリの袴といわれる部分)から離れて地上に落下して、その後に落葉が始まる。地上に落ちたドングリの上に落ち葉は降り積もり、種子捕食者の目から遮り、食べ尽くされることを防ぐとともに、霜や雪の害からドングリを守っている。

 キジバトなどの地上採餌性のハトたちは、よく落ち葉を足で蹴散らして、落ち葉の下の食物を探し出してついばんでいる。アオバトのような樹上採餌性の強いハトは、こうした足で落ち葉をどかしてついばむことが不得手ではないかと想像してみた。

 常緑樹はどうだろうか。常緑樹でも落葉はあるが、新緑のころ、新しい葉が生えるのと交代するように葉を落とすのだ。常緑樹の場合は、落ち葉の上にその秋のドングリが落ちることになり、アオバトたちが落ち葉を蹴散らさなくてもついばむことができるのではないだろうか。かくして1.5cm以下の常緑樹のドングリがアオバトたちの冬の食糧候補として残った。

 

参考文献
  1. 北村四郎・村田源 1979: 原色日本植物図鑑 木本編【II】保育社
  2. 北川尚史監修・伊藤ふくお著 2001: 『どんぐりの図鑑』トンボ出版
  3. 七尾純 1986: 『自然たんけん(15) ドングリ』 国土社
  4. 小田英智文・久保秀一写真 1998: 『ドングリ観察事典』偕成社
  5. 樋口広芳 1978: 『鳥の生態と進化』思索社
  6. 清棲幸保 1966: 『野鳥の事典』 東京堂出版