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ドングリとアオバト(4)

私のアオバト仮説 その23

田端
2003.09

 

貴重なドングリ採餌の詳細な記録

 冬のアオバトはドングリをよく食べている‥ということは、ほぼ確実なことのようだ。しかし、ドングリの実る樹林帯でアオバトが見られるという記録は全国各地であるが、ドングリを食べている行動をきちんと記した記録はなかなかみつかっていなかった。

 その行動を克明に記録した、“こまたん名古屋支部”の辻村三氏のレポート『アオバト取材メモ』(1995.3.31)からハイライトシーンを再録しておこう。今後、各地に冬季観察記録の提供を呼びかけていくときに、たいへん参考になる報告だからだ。

 ドングリ採食行動が観察された名古屋市昭和区の八事山興正寺は、大学のキャンパスや社寺林、東山動物園、植物園のある東山公園などの緑地が点在する、名古屋市の東方郊外のグリーンベルトの南端に位置している。 このあたりは、かつては、名古屋の緑したたる文字通り“東山”丘陵の一角であったことが想像される。かつて、アオバトたちはもっと数多く暮らしていたのだろう。

 

 

 『名古屋市野鳥生息状況調査報告(1991.3)』によれば、アオバトは1975年以降、市内のどこかでは必ず目撃されているが稀である。最近の調査(89.4〜90.3)では少数の個体が目撃されているが、47調査地点中、八事裏山、東山公園など5地点だけである。


94年にねぐらの木を発見

 私(辻村)がアオバトのことを正確に記録し始めたのは94年以後である。

[2月2日]昭和区八事山興正寺中門前の参道わき南東のアラカシの木にアオバトがねぐらをとっていることを発見した。

[2月3日、7日、22日、23日、24日]と同所で観察。

 茶色の長い糞が以前からこの場所で何度も確認されているので、このアラカシの木をアオバトの寝床と断定した。

 

名古屋市昭和区の八事山興正寺

 

95年はドングリを地上で食べる行動を観察

[2月1日、2日]いつものアラカシで休んでいるのを発見。


1メートルの至近距離で観察

 

 

 [3月18日]

 13時〜14時30分、2月の時と同じ興正寺のアラカシに飛来し休んでいた2羽のアオバトを岡崎幸子さん、伊藤弘子さん、古田晴美さんと確認、撮影。地上6mから7mほどの高さ。近くの参道を車や人が何度も通るが、特別な反応はなかった。
14時15分頃、枝を次々と飛び移り、地面に飛び降りる。1羽は岡崎さんの足もと1mくらいに降りて、岡崎さんが驚く。下で私が出したパンくずを食べるドバトのなかで、2羽のアオバトは、ドングリを数分で必死になって呑み込んだ。

 

 その姿を古田さんが最後まで丁寧に観察。 1羽は次々と19個も呑み込んだという。私がフィルムを切らして岡崎さんと現場を一時離れる。先に戻ってきた岡崎さんは南東の方向に低く2羽が飛び去るのを見た。

[3月21日]

11時30分〜14時45分、18日と同じ興正寺のアラカシのてっぺん近く10mの高さの葉の間で2羽の♂が向かい合って休んでいるのを岡崎さんと確認撮影。14時15分頃、羽づくろいを何度かして下をのぞき込む。次々と枝を飛び降りてきて4mぐらいの高さでいったん休み、羽づくろいをする。

 14時20分頃、地面に降りてドングリを数分で10個ほど呑み込むのを二人で撮影。1羽は数個食べただけで、キュキュキュキューと羽音を立てて勢いよく北北西の30m先の駐車場近くのアラカシの木のてっぺん付近(約10mの高さ)に低空飛行していった。残されたアオバトは食べることに熱心で5分ほどしてから同じ場所に飛んでいった。この個体は先に飛んでいった鳥の方向も見ておらず、鳴き声で合図もしなかったので、いつも同様な行動を取っているものと推理した。
案の定、先に飛んでいったアオバトと向かい合って 休息していた。お互いに何度か向きを変え、時々下をのぞき込むが、静かに休み始めた。下ではドバトが私の周りをうろうろしていた。

 “アオバトは樹上採餌”と本には記述されていたので、このようなシーンの撮影は貴重と思う。

見つけにくい 休んでいるアオバト

[3月22日]

12時30分〜14時15分、昨日と同じアラカシで1羽が休む。快晴でやや逆光のため見にくい。先にいた伊藤さんは発見できずにいた。近くの参道の人や車の動きには無反応だが、いつもより神経質と伊藤さんが言う。何度か下を眺めているのでそろそろ地面に降りると予測して観察。木の下で数十羽のドバトが私が与えるパンを食べていた中にアオバトが飛び降りてきた。ドバトが驚いて一斉に飛び上がり、アオバトも飛び上がって、いったん10m離れた北の木に止まり、首を伸ばして様子をうかがう。数分後、再び帰ってきた。

 13時40分頃、ドングリを食べる。わずか数分間だが、伊藤さんの観察では、13個のドングリを横にして呑み込んだ。食べるときに破れたものや、何か気に入らないものは嘴でくわえた後捨てていたという。一口で呑み込み、途中で何度か首を伸ばした。のど元がドングリでふくらんでいる。ある程度食べていつものアラカシに飛んでいった。私たちはあとの1羽がどうしたかとのぞいてみると、向き合って2羽のアオバト♂が静かに休んでいた。今合流したのか、前からいたのかは不明。それくらい風景に溶け込んでいて普通の人 には先ず発見できないと思われた。
樹上でアオバトは眠り始めたので、アオバトのために、これ以上干渉しないことにした。

(辻村 三氏 撮影)

[3月26日]12時45分〜17時、午前中は天気が悪かったが、午後からは時々晴れ間も見えるが寒い日になった。関東では雪。 いつものアオバトの木のてっぺん近くに2羽のアオバト♂が隠れるように休んでいた。 13時頃から岡崎さん、稲積菊美夫妻、通りすがりのご婦人、近くの中学生男児二人と観察開始。14時30分頃より1羽がよく下をのぞきこんだ。 14時40分頃より3mほどの高さの木に移動。降りるチャンスをうかがう。羽づくろいはほとんどしなかった。 静かに地面に飛び降り、辺りを見回してアラカシの実をついばむ。我々のたくさんのストロボを浴びても平気で今日はノンビリと余裕で食べ続ける。稲積さんのカメラのフィルムが切れて巻き戻し音がしたが、逃げずに食べ続ける。10個ほどは食べたろうと思われる。5分ほどで上に飛び上がり元の場所に戻った。樹上で新芽を食べている? 15時01分。伊藤さんは参道の車の中から観察していたが、樹上では、新芽を食べているようにも見えるという。私も以前からそのように感じるときがあったが、なにぶんにも下から見上げているので確認は充分できていない。その後はアオバトは降りてこず、羽づくろいする姿も見られた。風が強く吹き始め木が揺れる。時々向きを変える。相対していることが多い。よく見ると寝ていることもある。慎重に地上に近づくアオバト

 

[3月27日]

10時15分〜16時35分、快晴。名古屋ではソメイヨシノの開花宣言。興正寺のいつもの木のてっぺんで2羽のアオバト♂が休んでいた。昨日からお休みのようである。午前中はアオバトは静かに休んでいる。11時20分から私は中座。

 13時30分から平山高広さんと撮影観察。アオバトは高い位置で少しずつ移動中。その後、伊藤さんも参加。14時30分くらいから下の枝に移動。少しずつ降りてくる。5mほどの高さで2羽が並び羽づくろいを始める。下ではドバトが群れて食事中。ドバトの中には殻の破れたドングリをついばむものもまれにいる。

 15時12分頃、1羽の頭の少しハゲたように見える個体が飛び降り、数秒して、他の個体も近くに降りる。2羽がアラカシの実をゆっくりと飲みこむ。伊藤さんの観察では、7個と14個をそれぞれが食べて、15時15分頃、同じぐらいのタイミングで元のアオバトの木の頂上近くに飛び込んで移動、木の上では静かに休む。その後は特別な変化はなかった。

[3月28日]

12時30分〜17時、快晴で風がとても強い。久納温子さん、伊藤さん、亀井さんが興正寺のいつものアオバトの木の頂上近くに2羽のアオバト♂が休んでいるのを目撃。稲積夫妻と私も合流。春休みの小学生も見学。13時30分頃、5mほどの高さに移動してきた。2羽が寄り添うように並んでいる。時々下を見る。いよいよ地面に降りてくるかと期待していたが、10分ほどして再び頂上近くに移動。6名の観察者が見守っている。

 強い風に木が揺れアオバトも揺れている。14時05分頃、また2羽がそろって低い枝に移動。14時08分、静かに1羽が降りてあたりの安全を確認してドングリを食べる。観察者はアオバトから5m以内にいる。稲積さんと私のストロボに対して特別な反応はない。久納さんと小学生の観察では10個のドングリを食べたという。あとの1羽がどうしたか不明。

 14時11分、一気に飛び上がり頂上近くに戻り、そこに休む。

 久納さんはアオバトから3mの位置で観察。こんな近くで見られることに驚く。地面に降りていたのは2、3分ぐらいのこと。その後17時まで観察を続けたが、ずーっと休んだままだった。

[3月29日・30日]

両日とも一日中雨。午前、午後と発見できず。

[3月31日]

10時〜11時、快晴で暖かい日。興正寺のいつものアオバトの木の頂上近くに1羽のアオバト♂が帰ってきていた。

 [中略]

13時40分頃、アオバトが地面に降りる。上野天満宮でアオバトに会えなかった私と伊藤夫妻はちょうど間に合った。アオバトがドングリを食べていた場所は、数日前に私がその辺りのドングリを拾い集めてたくさんばらまいておいた場所であった。どこにドングリが多いか考える知恵を持っているようだ。10個前後のドングリを食べたようだった。

 アオバトはキュキュキューと羽音を残し、低空で飛行して北北西の50mほど離れた林の中に消えた。以後の消息は不明である。

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 その後、辻村三氏から聞いた話では、興正寺周辺の環境が変わってしまったせいか、ほとんどアオバトは見られなくなってしまったそうである。

周辺の鶴舞公園などには少数見られることがあるという。