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地名探検 塩と鷹と鳩

「塩」、「鷹」と「鳩」

私のアオバト仮説 その24

田端
2003.09

 

 とにかく山の緑の中のアオバトは見つけにくい。梢を移動して空を飛んでくれれば、少しは発見のチャンスもないわけじゃないが、谷間の人も入らない水源で少ししょっぱい水を飲んでいる姿なんか、見つけたら僥倖(ぎょうこう)というものだ。

 そんな山中のアオバトたちを探す手だてはないかと考えていたら、地名が頭に浮かんできた。

 われわれが営巣を観察した丹沢にも塩水林道。そうだ!塩水川もあるじゃないか。

 キーワードは「」「」そして「」である。


 アオバトが温泉の水を飲みに来ることが知られている群馬県多野郡上野村野栗沢のそばに、あの「日航機墜落事件」の御巣鷹山があり、塩ノ沢という村?もあることからひらめくものがあった。アオバトを餌とするタカの存在、アオバトが好むNaとワンセットに。

 塩ノ沢という地名はNaの存在を暗示し、御巣鷹山はかつて将軍家のために鷹を捕らえた場所という由来を持っている地名だ。

 「」と「」にちなんだ地名を探すことを始めてみた。地名の語源は学者先生が研究成果を基に諸説を唱えておられる。 私のような専門知識もない門外漢が地名についてあれこれいうのは無責任かもしれないが、そこは素人の仮説と許していただきたい。

「塩」を探してみた

 『世界大百科事典 日本地図』を広げて地名を探してみた。

 塩尾(しお)、塩井、塩貝、塩ヶ崎、塩釜、塩竈、塩狩、塩川…と続々“塩”のつく地名が並んでいる。潮(汐)はとりあえず調査対象から外す。海のそばの地名も外す。 山奥に残る“塩=Na(ナトリウム(イオン))"を暗示するアヤシイ地名だけをリストアップしてみることにした。

 楠原祐介氏らの『古代地名語源辞典』をひもといてみると、いきなりガーンとやられた。

 しほた(塩田)『和名抄』相模国高座郡、肥前国藤津郡の郷名。 今、相模原市塩田ほか多数。内陸にあるシホのつく地名については、昔から塩泉説、塩の輸送にちなむという説、特殊な粘土質の土壌にちなむ説などいろいろ解釈されてきたが、「シボ(萎)んだ地形のところ」(松尾俊郎)とする説がもっとも妥当性がある。古代の塩田郷もいずれも「シボ谷」と名づけたいような地形の場所にある。

 しかし、楠原氏は、しほのや(塩屋)、しほのやま(塩山)については、塩泉湧出説も捨てがたいとしている、ホッとした。要するに諸説あるのだな…とこちらは大胆に行くことにして、いくつか気になる地名を並べてみよう。

 山形県 塩井、塩地平

 福島県 大塩、塩沢、塩ノ岐、塩ノ岐川、八塩田、塩田(しおだ)、塩田(しおた)塩庭、塩ノ湯、塩手山

 栃木県 塩釜温泉、塩原、塩ノ湯、塩谷、塩沢山

 群馬県 塩ノ沢

 新潟県 塩野町(なんとそばに鷹取山が)、塩之入峠 塩谷川(しおたにがわ=川名)、入塩川(字?名)

 山梨県 塩山(えんざん)、塩山(しおのやま=山名)、塩平

 長野県 鹿塩、塩川、塩見岳、塩名田、塩崎、塩壺温泉、塩尻

 兵庫県 塩田温泉、塩山(しおやま)、塩地峠、

    塩津峠(京都府との境)

 奈良県 塩野

 和歌山県 塩津山

 島根県 海潮(うしお)温泉、塩田(しおた)

 広島県 塩貝

 香川県 塩入

 愛媛県 塩ヶ森(温泉郡!)

 福岡県 塩原(しおばる)、塩尾、塩谷

 

大事な地名が消えていく

 まだまだあると思うが、地名を調べていて想うことがあった。それは町村合併や開発などで由緒ある地名がどんどん消えていくことだ。 これは地図から消えていく地名が増えていく現象なので、史的遺産が亡くなっていくのだということをもっと重要視したい。 

 1968年刊行の『世界大百科事典 日本地図』も捨てたもんじゃないなと感じたが、郷名・字名はとても全部カバーしてはいない。 市町村地図にも当たってみたいが、大変な仕事だ。 ふるさとをお持ちの方、力を貸してください。

「高」は「鷹」か?

 「」についても問題提起だけしておこう。

 「鷹取山」については「高取山」とあるのも要注意という説がある。 また、「鷹通り山」が変化したものという方もいた。 「高見」だって「鷹見」かもしれない。 「鷹巣」「鷹巣山」も小さい山名まで含めたら結構ありそうだ。

 「高」の付く地名の詮索は後回しにしても、鷹居、鷹入、鷹岡、鷹峰、鷹狩山、鷹来(たかぎ)、鷹島、鷹栖、鷹巣、鷹泊、鷹戸屋山、鷹取、鷹鳥屋、鷹ノ湯、鷹羽ヶ森、鷹羽町、鷹架(たかほこ)、
鷹丸尾(たかまるび)と、「鷹」の付く地名が並ぶ。

 とにかく、鷹の主食は鳩だと考えれば、鷹の存在から鳩の行動圏をあぶり出す方法論もあって良い。

 姿を見つけにくい山の中のアオバトを探すヒントになるかもしれないので、全国アンケートの質問事項に入れたらおもしろいだろう。

 「」「」の関連地名と『高麗の鳥』237号の「仮説その八」の「日本各地のアオバト情報」に載っている地名とを照合してみると発見がありそうだ。

「鳩」についてのこんな話

 「鳩」については、鳩浦(大分)、鳩ノ巣(東京)鳩ヶ谷(埼玉)、鳩崎(茨城)、鳩田(青森)、鳩原(宮城)、鳩待峠(群馬)、鳩峰(長野)、鳩峰高原(山形)、鳩山(埼玉)など、頭に「鳩」が付くものだけでも数多く地名があがってくる。

 鳩ヶ湯(福井)、鳩ノ湯(秋田、群馬)については、『高麗の鳥』の244号に取り上げた金子典芳・鳩ノ湯温泉調査隊長の記事に触れられているので省略する。

 いろいろと気になる地名があるが、今回は谷川健一さんが採録した話を載せておこう。

★鳩間島 西表島の上原村から鳩間島に渡る。鳩間島には水田が ないので、住民は西表島に渡って耕作し、収穫したイネを人頭税として納めるために、島に大型帆船で持ち帰った。島中央の中森という小高い丘のあたりには、鳩が群棲している。 谷川(1998)

★鳩離島(はとばなりしま) 西表島の船浦湾に近い鳩離島は珊瑚礁の無人島。5月頃には鳩が巣を営み、雛を育てる。私の知り合いの糸満漁師は、この島に野営しながら、漁に出ない日には漁網を仕掛けてアオバトやキジバトを捕ったと話してくれた。 谷川(1998)

 


 
参考文献

  1. 谷川健一 1997: 『日本の地名』 岩波書店
  2. 谷川健一 1998: 『日本の地名 -動物地名をたずねて-』 岩波書店
  3. 楠原祐介ほか 1981: 『古代地名語源辞典』 東京堂出版
  4. 徳久球雄編 1979: 『コンサイス日本山名辞典』 三省堂
    溝手理太郎 1982: 『市町村名語源辞典』 東京堂出版
  5. 下中邦彦編 1968: 『世界大百科事典 日本地図』 平凡社